ビジネスの現場でよく耳にするデータ分析の重要性。しかしデータ分析とは何か、どう活用すれば良いのかイメージが湧きにくいものです。今回はデータ分析の意味や役割、手順について、5ステップに分けて具体的に解説します。
特に以下のような悩みをお持ちの方は、本記事が解決の一助となれば嬉しいです。
・今後自身の業務でデータ分析を始める前に、考え方のベースを身につけたい
・分析ツールの使い方ではなく、分析手順の大枠を把握したい
はじめに
前回は「問題の解像度を高める視点」について解説しました。
今回はステップ3として、「適切な”切り口”から問題を紐解いていく」をテーマに解説します。
問題を紐解く
前回の記事では、「大きさ・時間推移・割合や構成比・関係性」の4つの視点から問題の解像度を高める作業をしました。
ここからは「なぜその問題が生じているのか」「どんな改善施策が考えられるか」を深堀りしていきます。
そして深堀りには「ロジックツリー」を活用します。
ロジックツリーの活用
ロジックツリーとは、物事を論理的に要素分解して、真の問題や解決策を導くフレームワークです。また分解する際は、漏れや重複が生じないように注意します。
ロジックツリーの種類
ロジックツリーには主に次の種類があります。
ロジックツリーの主な種類
問題の発生場所を特定するもの(全体と部分の包括関係で構成される)
・【What】要素分解ツリー
問題の根本原因・解決策を特定するもの(全体と部分の因果関係で構成される)
・【Why】原因究明ツリー
・【How】問題解決ツリー
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まず要素分解する上で2つのアプローチがあります。
「問題の発生場所の特定」と「問題の根本原因・解決策の特定」です。
前者は、「先頭の要素は何と何に分解できるか?」とWhatの視点で要素分解していきます。
つまり「全体と部分の包括関係」を表します。
後者は「先頭の要素(問題)はどんな要因から生じているか?」のWhy、「先頭の要素(問題)はどのように解決できるか?」のHowの視点で要素分解していきます。
それぞれ具体的な例を見ていきましょう。
要素分解ツリー
まず問題の発生場所を特定する「【What】要素分解ツリー」です。
ある要素(問題)を、その構成要素で分解することで、全体と部分の包括関係として可視化することができます。同じ位置付けにある複数の要素を比較することで、問題発見に役立つものです。
次の例では、「自社の売上」を分解し、ボトルネック(売上が落ち込んでいる要素)の発生箇所を探索しています。
原因究明ツリー
問題の根本原因を特定する「【Why】原因究明ツリー」です。
ある問題の想定し得る原因を洗い出し、究明していきます。
分解対象(原因)の洗い出しには、分解元(結果)に対して「なぜ」を繰り返すことが大切です。
次の例では、「利益の低下」を分解し、利益の低下要因の探索を行っています。
問題解決ツリー
問題の解決策を特定する「【How】問題解決ツリー」です。
原因究明ツリーとの違いは、問題解決ツリーは「原因」ではなく「解決手段」を分解するアプローチである点です。
次の例では、「A製品の受注率向上」を分解し、受注率向上に寄与する解決手段の探索を行っています。
3つのアプローチについて解説しましたが、すべて「要素分解」という点では根本的にやっていることは同じです。「要素(問題)の全体構成を可視化すべきか」「問題の原因を究明すべきか」「問題に対する解決手段を探索すべきか」等の目的により、使い分けると良いでしょう。
切り口について
ロジックツリーを活用し、考えられる要素の洗い出し・分解していく流れを見てきました。
ここで「そもそもどんな切り口で分解を進めていけば良いか?」という疑問が残ります。
基本的には「自分で考えられる切り口を仮説で検討して進めていく」ことが大切ですが、「こういう切り口があるんだ」と頭に入れておいて損はない、いくつかのフレームワークもありますのでご紹介します。
・要素分解(足し算)型
3C(自社/競合/顧客・市場)
4P(場所/価格/商品/販促)
属性(年齢/性別/エリア/商品/チャネル..) など
・時系列・ステップ型
AIDMA(注意/関心/欲求/記憶/行動)
AISAS(注意/関心/検索/行動/共有)
購買ステップ(認知/興味関心/情報収集/比較/購入)
任意の期間①(過去/現在/未来)
任意の期間②(短期/中期/長期) など
・対象概念型
CVユーザー/非CVユーザー
定数/変数 など
・因数分解(掛け算)型
利益 = (顧客単価 – 顧客獲得コスト – 顧客原価) × 顧客数
売上 = 顧客単価 × 顧客数 × 購入頻度
売上 = 従業員1人あたりの売上 × 従業員数
CPC = コスト ÷ クリック数
CTR = クリック数 ÷ インプレッション
CVR = CV数 ÷ クリック数
CPA = コスト ÷ CV数 など
例えば「B製品の上半期売上は目標比85%。下半期の売上拡大に向けて、現状の改善点を見直したい」というケースがあったとします。
いきなり改善点は考えられないので、まずはもう少し言語化してあげる必要があるでしょう。
その際にこれらの切り口を活用できないか検討してみます。
切り口に「購買ステップ」を選択した場合は、どんな分解ができそうでしょうか。
この場合は「B製品の売上」という要素をロジックツリーの先頭に起き、その先に「認知・興味関心・情報収集・比較・購入」と購入フローの各要素に分解し、それぞれの接点において改善できる物事を探索していけそうです。
絶対的な正解はありません。
このように考えられる切り口から、仮説で検討を進めていくことが大切です。
ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
問題の深堀りにはロジックツリーが有効であることを解説しました。
そしてロジックツリーには主に次の種類があります。
ロジックツリーの主な種類
問題の発生場所を特定するもの(全体と部分の包括関係で構成される)
・【What】要素分解ツリー
問題の根本原因・解決策を特定するもの(全体と部分の因果関係で構成される)
・【Why】原因究明ツリー
・【How】問題解決ツリー
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「要素(問題)の全体構成を可視化すべきか」「問題の原因を究明すべきか」「問題に対する解決手段を探索すべきか」等の目的により、使い分ける(もしくは組み合わせて使う)と良いでしょう。
そして要素を分解していく際の最初の切り口も、基本的には「自分で考えられる切り口を仮説で検討して進めていく」ことが大切ですが、本記事でご紹介しているフレームワークも参考にしてみてください。
おわりに
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次のSTEP4では、「必要な情報・データを収集する」をテーマに解説しています。
・自身の業務で何かしらのデータ分析を行うことになったが、取り掛かり方が分からない
・データ分析に興味があるが、ツールの使い方などではなく考え方の基本を学びたい
このような悩みをお持ちの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。