『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』の書評

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執筆家・IT批評家の尾原和啓氏が、”良いもの”を作るだけではモノが売れない現代において、そんな時代に武器となる考え方「プロセスエコノミー」の仕組みや実践方法、そして未来予想図について解き明かす一冊。

・「プロセスエコノミー」という言葉の意味や役割を知りたい
・「モノが売れない」時代のビジネスの新潮流について学びたい

このような方におすすめの書籍です。


書籍の情報


書名:
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる

著者:
尾原 和啓

出版社:
幻冬舎

発売日:
2021/7/28

ページ数:
157ページ

目次:(※開閉ボタンクリックで目次が表示されます)

はじめに

第1章 なぜプロセスに価値が出るのか
 乾けない世代の誕生
 乾けない世代が重要視する「幸せの3要素」
 「役に立つ」より「意味がある」
 グローバル・ハイクオリティかローカル・ロークオリティか
 所属欲求を満たすための消費活動
 不安な時代のアイデンティティとしてのブランド
 「信者ビジネス」の正体
 世界の若者の「日本のオタク化」
 フィリップ・コトラーの「マーケティング4・0」
 6Dですべてのアウトプットが無料に近づく
 2050年に電気代はタダになる?
 物体そのものがなくなる未来
 シンギュラリティ大学の「エクスポネンシャル思考」

第2章 人がプロセスに共感するメカニズム
 オバマ大統領を誕生させた「Self Us Now」理論
 ノーベル経済学賞学者の「システム1」「システム2」理論
 デービッド・アーカーの「シグネチャーストーリー」
 「人のために」という欲望
 ハイネケンの最高すぎるCM

第3章 プロセスエコノミーをいかに実装するか
 「正解主義」から「修正主義」へ
 「幸せの青い鳥」はどこにいる?
 「オーケストラ型」から「ジャズ型」へ
 情報をフルオープンにして旗を立てる
 クリエイターを応援してくれるセカンドクリエイター
 アウトサイド・インかインサイド・アウトか

第4章 プロセスエコノミーの実践方法
 1億総発信者時代の「Why」の価値
 伝統文化の「心技体」
 スティーブ・ジョブズ亡きあとのAppleの課題
 最強のブランド「宗教」に学ぶ
 サイモン・シネックのTEDプレゼンテーション
 楽天で人気店になるための3つの法則
 「しくじり」が共感を呼ぶ
 「シンパシー」「コンパッション」という2種類の応援
 ジャングルクルーズ型かバーベキュー型か

第5章 プロセスエコノミー実例集
 BTSが世界市場で突き抜けた理由
 ジャニーズ事務所の緻密なファン戦略
 中国シャオミの「みんなで作り上げるスマホ」
 メルカリでは野菜を売れ
 「北欧、暮らしの道具店」が成功した理由
 ゲーム配信と Clubhouseがヒットした理由
 予測不能なプロセスこそ一番の果実
 創業9年で10億ドル企業になった「Zappos」
 広告宣伝費がゼロになる時代
 Y Combinatorのオフィスアワーが生んだAirbnbとStripe

第6章 プロセスエコノミーの弊害
 自分を大事にして常に「Why」に立ち返る
 プロセスエコノミーは調整のレバーを間違えてはいけない
 大切なのは他人ではなく自分のモノサシ
 フィルター・バブルの危うさ
 SNSがもたらすプロセスの肥大化
 「主体」を「観客」にするな
 「現実を視よ」
 「Will」「Can」「Must」の順番を間違えない

第7章 プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか
 世界的ベストセラーを生んだプロセスエコノミー的な生き方
 人生をEX化する
 夢中の3条件
 Googleの20%とマインドフルネス
 2割の働きアリはなぜ砂糖を見つけられるのか
 うろうろアリが生み出した Netflix
 「ジグソーパズル型」から「レゴ型」へのパラダイムシフト

おわりに スマートシティと「20 minutes city」



書籍の紹介


本書は、執筆家・IT批評家の尾原和啓氏が、”良いもの”を作るだけではモノが売れない現代において、そんな時代に武器となる考え方「プロセスエコノミー」の仕組みや実践方法、そして未来予想図について解き明かす書籍です。


プロセスエコノミーとは、結果(アウトプット)ではなく過程(プロセス)自体を商品やサービスとする新しい概念です。

似たような商品やサービスに溢れる現代における”新しい商売の仕方”を指しています。


例えば、野菜売り場で目にする「生産者の顔や声」があります。

単に野菜に値札が付いている売り場では、気にするのは商品の品質や値段でしょう。


しかし値札だけではなく生産者の写真やコメントが添えられていると、その野菜には他とは違う「意味」が付与されます。

コメントに「この野菜は私たちが大事に育てました」と書かれていると、それだけでもきっと安心感や親近感が生まれるでしょう。


プロセス(農家の物語)がアウトプット(野菜)に大きな付加価値を与えるのです。

このように、プロセスを消費者と共有し、その「意味」を伝えていくことはプロセスエコノミーそのものと言えます。



プロセスエコノミーの概念は分かったが、ではどう実践すればよいのでしょうか。


ただ単にプロセスを公開するだけでは、なかなか人は魅力に感じません。


そこで筆者は、プロセスエコノミーを実践する上で最も大切なのは、自分自身にある「Why」(なぜやるのか・哲学・こだわり)をさらけ出すことと主張しています。



イギリスの作家サイモン・シネック氏は、2009年のTEDトークイベントで「ゴールデンサークル」を用いて「人は”Why”で大きく動くこと」を説明しました。

※ How Great Leaders Inspire Action(優れたリーダーはどうやって行動を促すか)



このゴールデンサークルは3層構造で、内側から順に「Why」「How」「What」で構成されます。


・ Why:なぜ

→ How:どうやって

→ What:何を


サイモン・シネック氏はこの図を用いて、人の心を動かすのは「Why」であること。そしてAppeleやキング牧師、ライト兄弟は、「Why」を共有することに力を注いだからこそ、人々の心に残る偉業を成し遂げたことを解説しています。



「What」「How」は一定のモノサシで測れるものであり優劣が決められますが、「Why」はその人の生き方に依るものです。


ただ過程をオープンにすれば良いということではありません。


プロセスを開示することによって、なぜそれをやるのか?という哲学(Why)をファンと共有することが必要です。


その際、自分の意思で能動的に生きていたはずなのに、いつの間にかプロセスエコノミーの中でファンの期待に応えることを、つまり手段を目的としてしまうことは避けるべきです。


こうならないためには自分の「Why」に常に立ち戻る。自分は何のためにやるのか、自分の一番大切にしているものは何か。常に自問し、振り返り続けることが大切です。



本書では数多くの事例とともに「プロセスエコノミー」の捉え方や実践方法について詳しく解説されています。興味を持った方はぜひ手に取り実際に読んでみることをおすすめします。



ピックアップ(書籍から抜粋)


今後多くの業態において、プロセス自体に課金をしてもらうことや、プロセスを共有することによって、初期のファンを作ったり、熱のあるコミュニティを拡大したりすることが求められてきます。

ゴールから逆算してステップアップしていく生き方ではなく、日々歩いていること自体に喜びを感じ、瞬間瞬間のひらめきに従って柔軟に対応していく生き方。 変化の早い時代にはこちらのほうが合っているかもしれません。

私たちが生き残っていくためには世界の誰が見ても圧倒的に質が高いグローバル・ハイクオリティを目指すか、知り合いの〇〇さんが作っているモノなら買いたいという、特定のコミュニティにおいて熱い想いで支持されるローカル・ロークオリティを目指すかの2択で、中途半端はないということです。

もともとアイデンティティを満たしてくれていた①家族②ご近所③会社という三大所属先がすべて希薄化し、「どこかのグループに所属したい」という所属欲求を満たすことを消費活動にも求めるようになってきているのです。

自分のプロセス(生き様)を開示し共有することで、個の熱狂が集団の熱狂へと広がるのです。

人間が新しい変化を起こすときには、理屈や正論を並べていくら論理脳にアプローチしても簡単にはいきません。ワクワクを共有し、キュンと動く感情脳にアプローチしたほうが効果的なのです。そして感情脳にビビッと訴えるのは、ロジックではありません。ストーリーでありナラティブ(narrative=話術、語り口)です。

SNS社会では、至るところで相手を論破しなければ気が済まないとばかりに、ロジックとロジックをぶつけ合っています。でも相手の主義主張なんて簡単に変わりはしません。

プロセスをブラックボックスにして、完璧な状態のアウトプットを世に出すのが従来の常識だったので、学校教育的な正解主義にとらわれている人の目には、きっと「プロセスエコノミーなんて邪道だ」と映るのでしょう。 しかしプロセスを公開し、反応を見ながら変えていくことは激動の時代には邪道でも何でもありません。途中で方針を変更することを前提とした修正主義こそ、決められた正解のない時代の歩き方なのです。

「やりたいこと」の大枠さえ一貫していれば、アウトプットはどんどん変わっていい。プロセスを楽しめていれば、「ゴールのために自分がやるべきことは何か」という形式にがんじがらめになる必要なんてありません。

私たちは、「こうすればバズる」「こういうのが流行る」というモノをひたすら作る機械ではありません。 私たちは「自分が作りたいものを作る」ために命を燃やすべきなのです。 プロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、この大激動時代を生きる一人一人の武器にもなっていきます。

実践ポイント


・色々なことへの挑戦をとおして、自身の「Will」「Can」「Must」を形成する
・プロジェクトや仕事を手掛ける際は「Why」の言語化・開示を意識する



おすすめの読書法


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最後までご覧いただきありがとうございました。