『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』の書評

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データサイエンティストの松本健太郎氏が、世の中の大ヒットや大ブームの裏に隠れる人間の”善と悪”の心理の法則を「マーケティング理論、行動経済学、データサイエンス」を通して解き明かす一冊。

・ヒットやブームが、どのようにして生まれているか学びたい方
・ビジネスや人生の様々な局面において役立つ洞察力を身に付けたい方
・人間の煩悩の理解を通して、ビジネスや商品開発などの発想の幅を広げたい方

このような方におすすめの書籍です。


書籍の情報


書名:
人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学

著者:
松本 健太郎

出版社:
毎日新聞出版

発売日:
2020/7/11

ページ数:
336ページ

目次:(※開閉ボタンクリックで目次が表示されます)


序章 ヒット商品には必ず〝悪〟の顔がある
 「キレイな噓」にだまされてはいけない
第1章 人は「強欲」な存在である
 もっと欲しいという「悪魔のささやき」
 大ヒット商品は「不満」から生まれる
 「承認欲求という魔物」が人を狂わせる
第2章 「怒り」が人を動かす
 大人をイライラさせる「悪魔の少女」
 「間違ったジャッジ」に熱狂する人々
 「男女差別」という究極のバズワード
第3章 人は「怠惰」な動物である
 「本音トーク」に興奮する人々
 「サボりたい」という人間のダークサイド
 「人間のクズ」はなぜ愛されるのか
第4章 言葉は人を騙す
 「キレイごと」はなぜ売れないのか
 「煽り文句」はなぜ刺さるのか
 「新しい技術」はとにかく叩かれる
第5章 嘘は真実より美しい
 ギャンブラーほど「確率」を知らない
 「格付け」という「権威付け」テクニック
 「信じたいもの」しか人の目には映らない
第6章 人は「矛盾」に満ちている
 「客観と主観のあいだ」につけ入る方法
 「数字」を並べて言い訳をする人々
 「金と命」はいつも天秤にかけられる
おわりに



書籍の紹介


本書は、私たちの身近のことや、世の中で起きていることを例に、それらと人間の行動や考え方がどう結びついているかなどを、マーケティングや行動経済学、データサイエンスの観点から解き明かす書籍です。


全体の流れとして、人間の内面に存在する「悪」の欲求を、人間が持つ煩悩の代表格と呼ばれる根本煩悩「貪(欲望)」「瞋(怒り)」「痴(愚かさ)」「慢(怠惰)」「疑(不信)」「悪見(偏見)」に置き換え、それらを各章のテーマとして、人間の行動原理への考察が進められていきます。各章は、6つの根本煩悩それぞれを象徴する、誰もが知る昔話から始まり(貧の章は”花咲か爺じいさん”など)、続けて今度は現代に起きている事象を紹介(痴の章は”「新型コロナウイルス」が巻き起こす「熱狂」”など)、その上でそれらの事象が起こる背景を、人間の内面に着目して解説、といった流れで構成されています。


本書の中では、人間の内面には「悪」が必ず潜んでいるという前提で話が展開していきます。


「悪」というと「良くないこと」「許されないこと」というイメージで捉えることが自然かと思います。


そもそも「悪」とは一体どんなものなのでしょうか。


伝統的経済学では、人間は「思慮深く、ある意味で利己的で、高い計算能力を用いて、あらゆる情報を理解して、最適な意思決定を下せる」存在と考えられています。


ただし私たちの行動を眺めていると、健康を目指している一方で、何か”それらしい”理由をつけて高カロリーの食事を採ってしまったり、普段節約している中で、本当に必要か判断仕切れていないセール品を”それらしい”理由をつけて購入してしまったり、自分に都合の悪い情報に接すると、”それらしい”理由をつけて批判してしまったり..と、このような状況が身に覚えがある方は少なくないかもしれません。


これらは伝統的経済学の考え方とは真逆となります。つまり、人間の内面の大半は「思慮浅く、ある意味で破滅的で、高くない計算能力を用いて、ほとんどの情報を咀嚼できず、バイアスまみれの意思決定を下してしまう」存在ということになるでしょう。


しかし、このような歪んだ意思決定(バイアス)は、人間誰しもが心のうちに秘めているものです。これらは根本煩悩の「貪(欲望)」「瞋(怒り)」「痴(愚かさ)」「慢(怠惰)」「疑(不信)」「悪見(偏見)」といった側面により突き動かされ、人はこうした「悪」の側面にこそ、魅力や親しみを感じるだけでなく、時には熱狂さえするのです。


人間は単純ではなく、「矛盾」に満ち溢れています。ただしその矛盾を悪と捉えるのではなく、そのような「人間の心の善と悪という二面性」の存在を受け入れることで初めて、人間を深く理解できるようになると言います。


世の中の隠れたニーズの発見。
人間を熱狂に駆り立てる仕掛けの発見。


100%「善」なる人・モノ・サービスなんかはあり得ないからこそ、これらの実現に、人間の「悪」の感情への理解は欠かせません。



ピックアップ(書籍から抜粋)


データは事実ですが、真実とは限りません。 意味を読み取らなければ、データは何の役にも立たないのです。

多くのデータは不完全であり、事実・事象・事物・過程・着想などのうち、ごく一部をかろうじて表現しているに過ぎません。こうしたデータをもとに判断していると、誤った結論に導かれる可能性があります。 そこで重要になるのが、 洞察力 です。 優れたマーケターほど対象物を深く観察し、本質を鋭く見抜き、データから欠落した内容を推論によって埋め、仮説を立てて検証し、正しい結論を導きます。

本人から見れば「ベストではないかもしれないがベターな選択だった」と思える意思決定も、周囲から見れば「ワーストに近い」と見える場合があります。しかし、それは本人が愚かなのではなく、行動経済学的観点に立てば「バイアス」が意思決定を歪めている可能性があります。

膨大なデータを眺めて『次のヒットは確率的にこれ』と予想するよりも、人間の悪の側面を眺めて『こういう煩悩は誰もが持っているからヒットしそう』と予想する方が、よほどヒットする確率が高いです。

「不満」は人間の欲望を際限無く広げる「悪魔」かもしれませんが、企業の成長を促す天使のような側面もあります。忌避しなければ、大きなムーブメントを生みだせる機会は多いのではないでしょうか。

「承認欲求」を「いけないもの」だと否定するような商品・サービスよりも、「承認欲求」の存在を一定程度「承認」する「悪魔的」な商品・サービスのほうが、多くの人から支持されるのは間違いないでしょう。

人間は「権威」に弱いのです。「成功者」の権威であれば尚更です。その意見だけで判断を下してしまうほどに弱いのです。悪魔的とも言える説得力の源泉は、「成功すること」にこそあると言えるかもしれません。 結局、 努力しろ。結果を出せ。 この9文字が全てなのかもしれません。

正しいか間違いか、いいか悪いかという単純な二項対立で物事を捉えていると、バイアスに騙されやすくなりますし、また「人間性の洞察」からも離れていってしまうでしょう。

重要なのは「客観」と「主観」のいずれに軸足を置くかではなく、「人間とは矛盾を内包する存在だ」という「洞察」であるのは言うまでもありません。今日「熱狂」を生み出しているサービスはそうした「洞察」を踏まえて作られているのです。

人間とはいつも「道徳心」がありながら同時に「不健全」でもあり、「協調性」を持ちながらも同時に「和を乱し」がちです。 人は単純ではなく、「矛盾」した存在なのだ、というのが筆者の考えであり、また仏教をはじめとする先人の教えでもあります。

実践ポイント


・データに触れる際は、まずその意味(採取目的や抽出条件、サンプル数等)を読み取ることを意識する。
・世の中で起きる事象や商品、サービスに対して「善」「悪」の観点から着目してみる。



関連書籍


関連書籍として『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』があります。


HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員の楠本和矢氏が、行動経済学の様々な理論をビジネスやマーケティング領域に落とし込むための手順論と、それに基づく様々な参考事例について「実務家の視点」で伝える一冊です。



次の記事でご紹介していますので、よろしければご覧ください。


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最後までご覧いただきありがとうございました。